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新刊書籍紹介    
■2016年5月23日(2016年5月20日メールにて紹介)

書籍名

「限界マンション 次に来る空き家問題」

著者 米山 秀隆
発行 鞄本経済新聞出版社
価格 定価:1,600円(税別)
頁数 240頁
書評

 現在、マンションは建物の老朽化と区分所有者の高齢化という2つの老いに直面している。その結果、空室化、賃貸化が著しくなり、維持管理や建替えなどの終末期問題に取り組んでいくべき管理組合も機能不全状態になっている「限界マンション」も増加の一途を辿っている。本書はこのような状況が生まれた背景を述べた上で、現在のマンション終末期の問題点について触れながら、今後考えられる解決策にも言及している。
 戦後の持ち家取得を支援する住宅政策と持続的な地価上昇を背景にして、マンションは分譲という形で広く普及していった。
 しかし、建築物には耐久性に限界があることから、そのまま同じ状態で区分所有をすることはできない。建替えという選択肢は法制上の障壁がある他、多大な費用がかかるという問題もある。そのため、これまで区分所有法の改正や、マンション建替え円滑化法における容積率緩和特例制度の創設等がされてきた。だが、諸外国においては、建替えよりもむしろ区分所有権の解消等の方向で終末期問題に対応しており、建替えを前提にしている点に、我が国特有の問題が潜んでいる。
 著者は、マンション供給のあり方として、現在の分譲マンションの「所有」か質の悪い賃貸マンションの「利用」かの二択という状況を打破すべきだと主張する。そして今後は、一生涯住むことができる程度に建築物の耐久性を向上させた上での区分所有権付き、定期借地権付き、賃貸という3つの形態について、所有と利用のいずれを重視するかによって満足のできる選択が行えるようになることが望ましいと提唱する。
 本書は、マンション終末期問題を考える一助として、マンション管理組合の役員や区分所有者、管理会社の担当者、地方公共団体のマンション担当者等、多くの方に推薦できる内容である。

<(公社)全国市街地再開発協会 機関誌「市街地再開発」2016年5月号より転載>

マンション再生協議会